ミリ波・サブミリ波から遠赤外まで

 私たちの研究室では、ミリ波から、サブミリ波・THz波を含む遠赤外(FIR)と呼ばれる波長が数百〜十ミクロンの 周波数までの広範囲の電磁波の伝搬や、その制御、また種々の物質との相互作用の研究を行っています。この周波数帯 は、光と電磁波の中間の性質を持っており、従来から取り扱いが もっとも難しい波長帯といわれています。それでは、 私たちの研究室で行っている研究のうちいくつかをご紹介しましょう。

スペクトル

 最近の近距離通信に対する需要の増加から、実用化が難しいといわれていたミリ波帯までがいよいよ実用化の段階に入 ろうとしています。また、衛星間通信を始めとして、自動車用ミリ波レーダ、近距離電話通信など、この周波数帯の研究 が盛んに行われています。

 たちの研究室では、ミリ波(周波数70 GHz)、サブミリ波(500 GHz 〜700 GHz )帯の各種の伝送線路や回路素子の 研究を行っています。なかでも、応用上もっとも興味が持たれるのは 固体プラズマ材料 中 を伝わる電磁波の各種の非可逆な伝搬特性であり、これらの特性は、現在用いられているフェライトが動作限界に達する と考えられるサブミリ波・THz波帯域での、将来の新しい非可逆素子、能動素子へ応用が可能と考えられます。


A. 固体プラズマ導波管中の表面遅波の研究
  固体プラズマ材料(InSb)の薄板を挿入した種々の構造の 500 GHz から 700 GHz のサブミリ波帯導波管の伝搬特性の検討 を行っています。特にプラズマ特有の表面遅波共振が起り、光速に比べ非常に遅い速度で伝搬する波動の存在に注目していま す。


B. サブミリ波帯集積回路の基礎研究
  サブミリ波帯のIC化に適した構造として、誘電体イメージ線路の誘電体部分を固体プラズマ材料として使用できるp-InSbに 置き換える「プラズマイメージ線路」の可能性を検討しています。500 GHz から 700 GHz のサブミリ 波帯での実験を行い、非可逆伝搬特性を確認しています。


C. 半導体中のキャリア分布の可視化に関する研究
  固体プラズマ材料中に電流によるプラズマの注入を行う場合、材料中のプラズマの密度分布が実験の結果に大きく影響します 。 そこで、印加電流によるプラズマの分布や磁界による分布の変化を、試料にミリ波を透過させ解析を行っています。


D. サブミリ波検出器の研究
  サブミリ波帯に用いることができる検出器として、金属(W)と半導体(n-InSb)の点接触ダイオードを試作しました。 また、それを共振器と組み合わせることにより検出感度を上げることを試みまています。


E. サブミリ波レーザモードパターンの観測
  サブミリ波レーザを光源として伝送線路の伝搬特性やその変化を測定する場合、レーザの発振横モードが単一の基本モード であることが望まれます。そこで、私たちの研究室で使用しているサブミリ波レーザがどの様なモードで発振しているか実際 に測定を行っています。


F. 高温超電導薄膜
  超電導体で作られた共振器の非線形性を利用することでパラメトリック増幅器、ミキサー、周波数変換器などを作ることが出 来ます。このような素子は、能動素子を使用していないため雑音が少なく、非常に高い周波数での動作も可能になります。 私たちの研究室では、Y系の高温超電導体でバルク、厚膜、薄膜の共振器を作成し、マイクロ波、ミリ波帯での実験を行って います。