高温超電導薄膜の生成 9-1)
通常の方法で作成されたバルクや厚膜の超電導体は、多結晶のためたくさんの粒界がありそれが高周波の損失につながります。また、プレス加工や、切削加工で作成した場合の表面の粗さもロスにつながります。一方薄膜は、表面荒さも十分小さく、基板を適当に選ぶことによりエピタキシャル薄膜の作成も可能となります。そこで、超電導体の薄膜でストリップ線路を作りマイクロ波帯で実験をしています。下の図は、本研究室のRFスパッタリングのターゲット付近のプラズマの様子(左)と、一見普通の真空蒸着器ですがRFマグネトロンスパッタリング装置(右)です。
RFスパッタリング装置
超電導体で作られた共振器は、共振器の非線形性のためQ曲線に異常な振動やとびが現れることが知られています。この非線形性を利用することでパラメトリック増幅器、ミキサー、周波数変換器などを作ることが出来ます。このような素子は、能動素子を使用していないため雑音が少なく、非常に高い周波数での動作も可能になります。私たちの研究室では、Y系の高温超電導体でバルク、厚膜、薄膜の共振器を作成し、マイクロ波、ミリ波帯での実験を行っています
第2種超電導体や、第1種超電導体の薄膜は、磁束が量子化された状態で超電導体に「混合状態」の形で侵入します。超電導体を用いた共振器に磁束が侵入することや、侵入した磁束が高周波電磁界により動き出すことで共振特性に各種の非線形性が現れると考えられます。実験では、バルク超電導体で作成した半同軸型共振器と、厚膜超電導体で作成したストリップ共振器のQ特性や、薄膜超電導体で作成したストリップ線路の透過電力量は、直流磁界を印加することにより変化させる事ができる事が確認され、高温超電導体で構成された共振器も、共振器の非線形性が現れる可能性が示されました。今後は、サブミリ波帯と高温超電導の組み合わせた種々の研究を行う予定です。
9-1) 平成4年度修士論文.