ギター演奏音の自動採譜に関する研究

ギター演奏音から自動で楽譜を作成するシステム(自動採譜システム)の開発を目的とした研究を行っています。

1. はじめに

採譜(いわゆる耳コピ)とは,演奏音から楽譜を作成する作業のことです。 楽器の演奏のために行われるほか, 楽器の理解や民族音楽等の保存のためにも重要です。 しかし,音楽的な知識や経験が必要で,多くの人には難しいです。 そこで,コンピュータに採譜を行わせる自動採譜技術が期待されています。 自動採譜には,以下のような要素技術が必要とされています。
  • 音符(音高・音符長)認識
  • コード(和音)認識
  • 調性(キー)認識
  • 拍節認識
  • リズム認識

採譜のイメージ

2. コード認識について

Cメジャーの周波数スペクトルの例

コード(和音)のような多重音では,基音(演奏する目的の音)の他に複数の倍音が発生します。 周波数解析を行って周波数スペクトルを求めると,たくさんのピークが現れます。 図は,ギターによるCメジャー(ド・ミ・ソの和音)演奏音の周波数スペクトルです。 どのピークが基音で,どれが倍音なのか区別するのは非常に困難です。

基音がわかれば演奏した音高を認識することができますが, 個々の音高が認識できなくても,コードがわかれば 楽譜(TAB譜やコード譜など)の作成に役立てることができます。

3. ギターにおけるコード演奏とその認識方法

ギターでは,基本形と呼ばれる指の配置(ポジション)で弦を押さえてコードを演奏します。 例えば,CメジャーとC#メジャーは,押さえる位置は違いますが基本形は同じです。 この基本形をデータベース化することで,コード認識に利用することができます。 このコード認識アルゴリズムを,「構成音情報を用いたギター演奏音のコード認識手法」として提案しています[1][2]。

Cメジャーの押弦位置と各音高

C#メジャーの押弦位置と各音高

ギターコード演奏音のデータセットを公開します

提案しているアルゴリズムの評価のために,ギター演奏音を録音しました。 このギター演奏音を「Guitar chord sound dataset」として公開します。 研究目的であれば,誰でも利用することができます。
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関連する論文など

[1] Y. Bando and M. Tanaka: "A Chord Recognition Method of Guitar Sound Using Its Constituent Tone Information", IEEJ Trans. Electr. Electron. Eng., Vol.17, No.1, pp.103-109, Jan. 2022.
[2] 田中元志:“コード認識方法,コード認識プログラム,及びコード認識システム”,特許第7224013号,Feb. 2023.